
この2〜3年、「女性外来」とか「女性専科」が増えました。
中には、「性差医学」「性差医療」「女性医学」という言葉を見かけたかたもいらっしゃることでしょう。
この現象を、私は感慨深く受け止めています。「総ては更年期医学から始まった」と言っても過言ではないのではにかと考えることがあります。
私は元来、そして今でも循環器科の医者です。
医学の教科書や専門書を開くと、循環器疾患のみならず、精神科でも皮膚科でも、小児科においてすら、疾患別に男女比が書いてあります。発症年齢の男女差なども記載されています。例えば今、医師用の簡易なマニュアル本を開きますと、「‥‥病は40−50歳、男女比は2:1と男性に多い。」とか、「40歳以後の中・老年期に多く、男女差はない。」とか、「中高年の女性に多く見られる」「閉経後の女性に多発する。」というような表現に、多々出会います。
そのような、「疾患の発症の違いを性差の面からもう少し深く研究し直そう」という動きが、「性差医学」「性差医療」「女性医学」なのです。
その理念の下、臨床の場で観察・治療を行い、症例を積み重ねていくところが、「女性外来」「女性専科」と考えて良いでしょう。
私が更年期医療の専門外来を開業して、最も戸惑い、焦ったのが、更年期症状の巾の広さでした。
例えば、のぼせや不眠や頭痛など更年期の典型的な症状を訴えて来院したAさんが、エストロゲン(女性ホルモン)で改善していくのは納得できます。が、Aさんの両腕から首筋まで痛々しいほど発疹で真っ赤になっていた皮膚疾患が次第に治っていき、有り難うございましたなどと言われると、かえって戸惑ってしまいます。皮膚病の改善は、私の想定外のことでしたから。通っていた皮膚科医からは、明確な診断名は聞いていないと言うことでした。
逆にこういうこともあります。更年期障害の一つ、膝関節痛を訴える方は多いのですが、Bさんは整形外科医から検査で異常がないからと治療は受けなかった。ところがCさんは既に半年以上お薬を貰ったり物理療法を受けているが軽減の兆しがない。皮膚病のAさんの例と異なり、私はこの膝痛に対してはエストロゲンの治療効果は想定内のことと信じながら治療し、改善を見ました。
「性差医学」の普及を急いで欲しいと思うのは、こういう時なのです。つまり、
Aさんのケースでは、私は皮膚科において更年期世代の女性、即ち血中エストロゲンの低下によって発症する皮膚疾患があるのかどうか、その治療法について医学教育の中で確立していただきたい、ということなのです。
Bさん、Cさんのケースでは、更年期女性は各種関節痛や骨粗しょう症など、整形外科を受診することが多くなりますが、整形外科医の治療の選択肢の中にHRT(ホルモン補充療法)が含まれていないことが多いのです。必要だと思われたときには、患者さまにお勧めできる外来であって欲しいと考えるわけなのです。